新版『カミング・バック・トゥ・ライフ―生命への回帰』が2021年7月10日に日本能率協会マネジメントセンターより発売されます。
今回、2020年9月の旧版の発売から1年を経ずに新版が発売されることとなり、旧版をご購入くださったみなさまへの出来得る限りの配慮として追補をしないという訳者の希望を受け入れていただき、カバーと最低限の訂正以外の変更をせずに新版を出版いただけることになりました。
本来でしたら書籍に収載されていたであろう訳者前書きとなるメッセージを、ここに公開させていただきます。
『カミング・バック・トゥ・ライフ ―生命への回帰』再出版にあたって
このたび、日本能率協会マネジメントセンターから新たに本書の出版をしていただくことになりました。本書の価値を信じて絶版とならぬよう尽力してくださった旧サンガの川島英作さん並びに日本能率協会マネジメントセンターの柏原里美さん、そして何より、本書を愛し、読書会やSNSまた口コミを通して広く紹介してくださったみなさまの支えにより、こうしてこの本を再び日本の表舞台に送り出せる運びとなりましたことに深く感謝しています。
この前書きを書いている2021年5月のカリフォルニア州バークレーは、初夏を感じさせる爽やかな風と柔らかな日差しで輝いています。けれども一方で、夏の深刻な水不足は避け難く、すでに一般家庭でガーデニングに使用する水道水の取水制限が行政機関から要請されています。また、例年その規模を「史上最大」に更新してゆく山火事の不安は、上昇しつつある気温とともに人びとの間に高まっています。
四季折々の表情をもつ日本に目を向けてみれば、これから始まる梅雨と引き続く夏を思い、今年こそは大きな水害が起きないように、生命を奪うほどの猛暑とならないように、巨大台風による凄まじい被害が出ないようにと祈らずにはいられません。
翻って、本書の原著は2014年に出版されています。この7年間の間に「これまで通り」の物語はもはや現実的ではなくなり、いよいよ大破綻と大転換の2つの物語がその姿を世界に現してきました。どちらの物語が紐解かれるにせよ、この先、私たちの生活が、あらゆる点において大きな変化を余儀なくされることは間違いありません。慣れ親しんだ状況から新たな状況へと適応していくのは決して簡単なことではなく、痛みもともなうことでしょう。
けれども、私たちには、その準備ができているでしょう?
2020年に行われた「つながりを取り戻すワーク」を学ぶ日本のコミュニティに向けた集まりで、ジョアンナ・メイシーは参加者たちにこう語りかけました。
この言葉には、彼女と彼女の仲間たちが数十年という歳月を費やして作り上げ、今なお進化発展し続けている「つながりを取り戻すワーク」への絶対的な信頼が込められています。
圧倒的な困難を前にして、立ちすくんだり、恐怖に絡めとられたり、互いに背を向け合わないでいられるように。そうではなく、危機の時代だからこそ、ともに痛みに向き合い、手を取り合って行動を起こせるように。本書は、これから迎える動乱の時代に必要とされる智慧と慈悲を養うための実践書です。それは、危機の最中にあってその価値を微塵も損なわないどころか、かえってその真価を発揮することでしょう。
これからの時代において、ますます大きな意味と必要性をもってくるに違いないこの本が、日本能率協会マネジメントセンターという新たな出版社をえて、さらに多くの方がたに届く機会を与えられました。ここに収められた計り知れない智慧と数々のプラクティスが、変化の時代を生きてゆく私たちの一助となることを願ってやみません。
2021年5月 バークレーにて
齊藤由香
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