『アクティブ・ホープ』
ジョアンナ・メイシー 著 クリス・ジョンストン 著
三木 直子 訳 榎本 英剛 翻訳協力
春秋社 2015/10/18出版
いま、生きることが困難な時代に、希望をもって生きることができるか。個人的・社会的なよりよき変容のためにできることとは。「つながりを取り戻すワーク」の理論的枠組みと、その実践法を提示。
大転換の時代に、「希望」をもって生きる。
個人と社会を変容へ導く、理論と実践を伝える一冊。
米書籍『アクティブ・ホープ(原題:Active Hope)』の著者 ジョアンナ・メイシーは、仏教学者であり、社会活動家として80年代初めから「絶望と再生のワークショップ」を行なっていました。
社会問題や原発事故、紛争などによって、世界や地球の絶望を感じたときにそこで意識を喪失するのではなく、感じた絶望としっかり向き合い、その自分の中の痛みは、愛があるからこそ感じることを認識し、生命のつながりへの目覚めをワークショップを通して深めていきます。
このワークは、その後「つながりを取り戻すワーク(Work that Reconnects)」と名を変えました。
それは、一人ひとりの内側にある声・智慧・力、そして他者との深いつながりをとり戻すワークです。
Cris Johnstone からのビデオメッセージ(日本語字幕付)
「I need you We need each other」
ジョアンナ・メイシーからのメッセージ part 1(日本語字幕付)
「I need you We need each other」
ジョアンナ・メイシーからのメッセージ part 2(日本語字幕付)
『アクティブ・ホープ』翻訳協力・監訳者
よく生きる研究所 代表
榎本英剛
ジョアンナのワークを通して、
自分の世界観、人生観が大きく変わった
私がジョアンナ・メイシーと彼女が開発した「つながりを取り戻すワーク」に出会ったのは、今から約20年前、私が米国に留学していた頃でした。すでに当時60歳を優に超えていた彼女が威厳と確信、そして愛情に満ちた表情で「世の中のすべての問題は、私たちが自分自身や他者、自然、地球とのつながりを失ってしまったことから生まれている」「だから、私たちがこれらのつながりを取り戻すことこそがよりよい未来を築くために不可欠なのだ」と語っているのを目前にして、心が奥底から震えたのを今でも覚えています。その後、何度も彼女のワークに参加する中で、自分の世界観、そして人生観が大きく変わり、それが今の自分を支えている大きな柱の1つになっています。
この度、ジョアンナの近著である『アクティブ・ホープ』の日本語版が、条件つきながら、出版されることになり、心からうれしく思っています。というのも、彼女はこれまでに多くの著作を出版しており、その中には日本語訳されたものもいくつかありますが、私の人生を変えた「つながりを取り戻すワーク」について本書ほど包括的にわかりやすく書かれたものはかつてなかったからです。本書のメッセージが多くの日本の人たちの心に届き、希望にあふれる未来に向けて力を合わせていく原動力になることを切に願っています。
翻訳家・共生革命家
齊藤由香
地球上の全ての生命体へと向けられた
ジョアンナ・メイシーの愛と覚悟
2011年よりジョアンナ・メイシーのもとで学び、日本人としては初のWork that Reconnects Networkingに名を連ねるWTRファシリテーターである。 バークレー在住。ベイエリアおよび日本においてWTRワークショップをファシリテートしている。
ジョアンナは美しいものが大好きです。それが自然のものであれ、人の手によって作られたものであれ、この世の中の美しさというものに対して、どうやら彼女は否応なくこころが震えるようです。例えば、彼女の家の庭にある大きな木に咲く白い花に、月明かりが静かに降り注いでいる様子。夕暮れ時、キッチンの窓から差し込む切り裂くようなオレンジ色の太陽の光。夜咲きのジャスミンの素晴らしい香りや、焼きたての魚の香ばしさ。
そうしたもの一つ一つに子供のような興奮を覚え、手を胸にあてて静かに立っている彼女を見ていると、わたし達の普段の生活にはどれほど多くの美しさが溢れていることかとあらためて気づかされます。こうした美しさを彼女はこころから愛しているのでしょう。
著述の傍ら、2005年から5年間、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの事務局長を務めるなど、「現代の祈りは行動すること」を実践し、現在は市民活動支援のための民間基金(一般社団法人)アクト・ビヨンド・トラスト代表理事。
アクト・ビヨンド・トラスト http://www.actbeyondtrust.org/
アシタノアシアト http://hoshikawajun.jp/
核ストレスを見つめてジョアンナに最初に注目したのは、1990年初版の拙著『地球生活』(徳間書店、95年に平凡社ライブラリーで復刊)で、核兵器と原子力を含む核技術の利用が現代人にもたらす根源的・中核的ストレスを「核ストレス」と捉えたときだった。1970年代から80年代にかけて世界的な盛り上がりを見せた反核運動と、チェルノブイリ事故を受けた反原発/脱原発運動の中でも、人間だけでなく地球生命圏の大半を巻き込むメタ危機としての核問題を真正面から見つめた論者は多くなかった。そんな中、「核の公案」に取り組む姿勢においてジョアンナは一番近い先行者だった。
その後、屋久島から家族で刊行したディープエコロジー年報の3冊目『LIVEGreen地球生活書3』(ほんの木、1992年)で詳しく紹介するとともに、ジョアンナらによるディープエコロジーの手引き『地球の声を聴く』(同、1993年)と、ジョアンナ自身の『世界は恋人 世界はわたし』(筑摩書房、1993年)を続けて監訳し、核問題に向き合うアプローチを環境問題全体に敷衍するジョアンナの実践と思索に学び続けた。ディープエコロジー・ワークショップ〈全生命の集い〉も屋久島で2回開催した。
それ以来、直接のご縁はないものの、ジョアンナが世界認識の中心に据える「相互依存的連携生起(dependent co-arising)」(仏教の「因縁生起」の現代的言い換え)と並んで、いまも心の奥底に打ち込まれたままの基準軸が「核の守護倫理」(Nuclear Guardianship Ethic)だ。核兵器や原発への賛否を超えて、核廃棄物という究極的な負の遺産を生み出してしまった責任を共有しつつ、人類社会全体、とりわけ核技術の利用国で、その責任をどう形にするかを深く問い、答えを探ること――。
ジョアンナは地表近くに回収可能な方法で保管し、数千年から数万年の射程で生態系への影響を抑えながら守り抜く、新しい文化と伝統を育むことを提唱していたが、東電1F事故をどう受けとめただろうか。 『アクティブ・ホープ』日本語訳によって、ジョアンナの問いを共有する人の輪がさらに広がりますように!
絶望にしっかりと向き合ってもたらされる
深いやすらぎと大きな勇気
90年前後にカリフォルニアでジョアンナ・メイシーの薫陶を受け、以後、人と自然・他者・自己をつなぎなおすワークショップを実践。
「深いやすらぎ、大きな勇気」
様々な問題に気づき、意識すればするほど、絶望的になったり孤立してしまったりすることがあります。ジョアンナ・メイシーは、絶望したり心を痛めたりするのは人としてとても健全なことだと言います。それは、人にケアする心があり、深いところで万物がつながりあっているからこそのこと。絶望をそこまで深め、慈悲や希望や力として再生させていく。そんな「絶望と再生のワークショップ」を仲間たちと開発し、1970年代の米ソの核の軍拡競争や環境問題が悪化し始めた頃から、世界各地で多くの人々を勇気づけてきました。
私も91年の湾岸戦争の頃にアメリカでジョアンナに出会い、精神世界と社会変革を統合する彼女の世界に大きな影響を受けました。絶望にしっかり向き合い、万物の相互依存のさまを理解し、慈悲や希望にまで昇華させたとき、もたらされるのは「深いやすらぎ、大きな勇気」。小さな自分の殻を超え、地球生態系や全生命史にまでつらなる大きな自己を拠り所に、深い安心と自分なりに取り組もうという勇気が湧いてきます。
彼女が生涯をかけた「つなぎなおす仕事」の集大成である『アクティブ・ホープ』が、日本の志ある方々を励まし点火するのを楽しみにしています。
仙田典子
今こそジョアンナのワークが必要なときだ!
と、思い続けて
ニュージーランドで「チェルノブイリ疎開」をしているとき、ジョアンナ・メイシーの本に出会い、帰国後に翻訳・出版。東日本大震災後は、避難者が西日本でもっとも多い岡山で支援活動を続けながら、アクティブ・ホープの普及に努めている。
冷戦さなかのチェルノブイリ原発事故で、核まみれの世界に絶望し、当時先進国では唯一の非核国だったニュージーランドに「疎開」したわたしは、そこでジョアンナ・メイシーの『絶望のワーク』という本に出会いました。「世界に対する痛みや悲しみは、人としての健全な反応である」、「絶望を通して、わたしたちは真のつながりと愛に目ざめる」。これらの言葉に射抜かれ、促されて、わたしは、一度逃げ出した日本に帰ってきたのでした。
その後、3年がかりでこの本を訳すなかで、中野民夫さんの知遇を得て、ジョアンナ関連の本を次々に訳したり、彼女を日本に招いてワークショップをするといった流れに加わることになりました。この数年はまた、自らの病い(ガン)を通じて、死と生に向き合わされた時期でもありました。その歩みをともにしてくれる「地球の仲間」がいることは、この時代の恩寵であり、なによりの喜びだと感じています。
東日本大震災と福島原発事故の後、岡山で避難者の支援に忙殺されながら、「今こそジョアンナのワークが必要なときだ!」と思い続けてきました。さいわい何人ものジョアンナのお弟子さんが、日本で精力的にワークを行ない、その輪を広げてくれています。今回、ジョアンナの新著『アクティブ・ホープ』が出版の運びとなり、この流れがますます強く・速くなっているのを実感します。
震災以後のすべてのよき働きに感謝し、死と放射能の痛みを抱きしめ、新生された目でこの世界を見つめ、生きとし生けるものたちと前を向いて歩んでいく……。このアクティブ・ホープのプロセスを、「地球の仲間」といっしょに続けていけるよう、願ってやみません。
PART1:大転換
第1章:現代を覆う三つの物語
第2章:スパイラルを信じる
第3章:感謝の気持ちを感じる
第4章:世界に対する痛みを大切にする
PART2:新しい目で観る
第5章:自己という概念を拡げる
第6章:異なる種類の力を使う
第7章:コミュニティの体験を豊かにする
第8章:時間をより大きな流れでとらえる
PART3:前に向かって進む
第9章:気持ちが奮い立つようなビジョンをつかまえる
第10章:可能性を信じる勇気を持つ
第11章:自分の周りにサポート・システムをつくる
第12章:熱意と活力を保ち続ける
第13章:不確実性が私たちを強くする
日本語版翻訳者
東京生まれ。国際基督教大学教養学部語学科卒業。
外資系広告代理店のテレビコマーシャル・プロデューサーを経て1997年に独立。海外のアーティストと日本の企業を結ぶコーディネイターとして活躍する傍ら、TV番組の企画、クリエイターのための様々なワークショップや、スピリチュアル・ワークショップなどを幅広く手がける。訳書に『ロフト』『モダン・ナチュラル』(E.T.Treville)『[魂からの癒し]チャクラ・ヒーリング』『ポケットの中のダイヤモンド』(徳間書店)、『ダルマ・ライフ』(春秋社)他多数。無類の猫好きで、夫と愛猫の3人暮らし。趣味は歌、映画鑑賞、バリ旅行。
米国の仏教哲学者で社会活動家。仏教、一般システム理論、ディープ・エコロジーを深く学んだ彼女は、50年以上に及ぶ平和、社会的公正、環境分野における活動家としての経験とそれらの学識を統合して、「つながりを取り戻すワーク」という、個人的および社会的な変容をもたらす理論的枠組みとそれを現実で実践するための効果的なワークショップ手法を生み出した。
このワークは世界中の教育者やNGO、市民活動家たちによって採用され、社会的・環境的に困難な状況に置かれている人たちが、絶望や無気力を乗り越え、互いに手を取り合って能動的に行動を起こしていく力となっている。米国カリフォルニア州のバークレーに在住。著作に『世界は恋人、世界はわたし』(筑摩書房、1993年)など多数。
ジョアンナ・メイシー 著
クリス・ジョンストン 著
三木 直子 訳
榎本 英剛 翻訳協力
出版社 春秋社
出版年月日 2015/10/18
ISBN 9784393333440
Cコード 10
判型・ページ数 四六判・352ページ
定価 本体3,000円+税
現在こちらの本は、出版社の春秋社の方にはすでに在庫がなく、入手困難になっています。
また、2022年6月14日に、新版 アクティブ・ホープが発行されています。新たに書き直された部分もあり、英語版でも読める方はこちらをお勧めします。
翻訳、再販については未定です。
Active Hope (revised): How to Face the Mess We’re in with Unexpected Resilience and Creative Power
(新版 アクティブ・ホープ)
Joanna Macy and Chris Johnstone
ジョアンナ・メイシー、クリス・ジョンストン/共著
New World Library (June 14, 2021)
ニュー・ワールド・ライブラリー(2022年6月14日発行)
https://www.amazon.com/Active-Hope-revised-without-Going/dp/1608687104